2007年10月22日月曜日

プチシアター特集

 今回は、プチシアターというネーミングのパッケージで販売されているフランスの優れた短編アニメーションの紹介です。

  プチシアターとは、ヨーロッパの優れた短編映画やアニメーションを収録したDVDシリーズです。そのVOL2、VOL3は、フランスの短編アニメ集で、プチシアターVOL2は、"恋するアニメーション”と題し 「お坊さんと魚」「恋のかけひき」「紙ヒコーキ」「アパートの猫」 の4作品を収録しています。

ディスクパッケージの装丁が素晴らしい。
紙製のハードカバーのおしゃれな絵本仕立てで、お皿(ディスク)がどこかに隠れている仕組み。隅々まで工夫があり、収録した作品を大切にしている姿勢がうかがえるうれしいパッケージです。贈り物としても喜ばれるでしょう。

 企画発売者は、海外の短編アニメーションを日本に紹介し続けているオフィスH(アッシュ)の伊藤裕美さんです。では、収録作品のご紹介です。

「お坊さんと魚」1994年 フランス 6分30秒 カラー 

 魚を捕まえようと日夜の区別も寝食も忘れて、やっきになるお坊さんの姿を描く不思議で素敵な世界。

「岸辺のふたり」マイケル・デュドウ・ドゥ・ヴィッド監督の出世作です。詳しくは、9月に紹介しましたので、そちらをご覧ください。



 面白いことに、次の三作品はいずれも「窓」から始まっていました。個性はまったくちがうのに、ラストもそれぞれがしゃれていて、ほのぼのとした出会いで結ばれています。


「恋かけひき」1994年 フランス 7分50秒 カラー

 世間知らずな男が、退屈な日々をすごしている。男は、家の窓から見える高層ビルの、とある窓によりかかって唄う娘に一目ぼれ。さっそく花束を持って娘の元に出向く。が、途中、さまざまなアクシデントが待っている。男はそれらの困難を乗り越えて、やっとこさ娘の元にたどり着くが、無情にも娘には恋人がいて・・・。




 高層ビルと道路と窓を上手に使用し、人間を疎外する都会のほろ苦くも乾いた人間模様を描いています。恋人の元に向かう男の周辺に、乾いた世相を象徴するような事件があいつぎますが、思いがけないラストが用意されていて、人生は捨てたものではない。多様な出会いと幸せがあることを伝えてくれる作品です。
 作者は、柔らかい単純な線でドラマ上必要最小限なものしか描いていません。それが、かえって観る者の想像力を駆り立てます。
大人の味わい。

「紙ヒコーキ」1995年 フランス 7分 カラー 

 裏町の貧しいアパートにひとり住む若者が、窓越しに悩める孤独な娘を見出した。若者は、娘を励まそうと思い、紙ヒコーキにメッセージを乗せて窓より飛ばす。気まぐれな紙ヒコーキは、目的の窓には向かわず他人の窓に飛び込んでしまう。かまわず、若者は紙ヒコーキを飛ばすが、次々と他の窓に飛び込んでしまう。やっと娘の元へ紙ヒコーキが届き、瞳を輝かせた娘が窓より身を乗り出して送り主を探したとき、近所の窓という窓から人々が見つめ、娘を笑顔で迎える。


 この作品は、木炭調のタッチで裏町のアパートと思われる家々を、しっとりと渋く生活感のある味わいで描いています。
 都会の人々の軽く危うい絆を、これまた軽く危うい紙ヒコーキに託して紡ごうとする若者の行為は、思いがけずも周辺の人々の心に温かい灯を点します。人は群れて生活しながら、他人の干渉を避けて壁の中に閉じこもりがちです。その一方では出会いを心待ちにし、他人の生活に強い関心を持たずには居られぬ矛盾した存在です。作者は、その矛盾の間隙を狙ってこの作品を放ち、観る私たちの心にも灯を点すことに成功しています。
子どもから大人まで楽しめます。

「アパートの猫」 1998年 フランス 7分 カラー
 高層アパートの部屋で退屈な毎日を過ごしている猫は、ときおり窓にやってくる小鳥たちの自由さに憧れている。窓から見える高層ビルの屋上に、緑に覆われた鳥たちのコロニーがある。冷たい主人の目を盗んで脱出し、憧れのコロニーをめざす猫の冒険が始まる。人ごみと自動車のラッシュに目を回しながら、やっとたどり着いたビルの屋上にはなにもない。まちがってとなりのビルに登ってしまったのだ。あきらめない猫の、危険に満ちた冒険が続く。




 まるまると太った猫のとぼけた味がいいです。切り紙のコラージュで構成された背景が、おしゃれな雰囲気をかもしだしています。
万人で楽しめます

★フランスでは「窓」というものになにか特別な意味を持たせているのでしょうか。そういえば私も、毎日「ウィンドウズ」に向かって新しい知識を仕入れたり、文字や絵を記録したりしています。人生にとっての「窓」は新しい世界を知るスクリーンであり、希望へのスタートラインなのでしょうか。そんなことを考えながら観たプチシアターVol.2の三作品でした。

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