2007年8月31日金曜日

「アリの冒険」101986年 ロシア 監督:エドアールド・ナザーロフ 

ザグレブ国際アニメーション映画祭受賞

★ 風に飛ばされた気のやさしい蟻が、さまざまな仲間に助けられながら巣穴に戻るまでのスリルに飛んだ旅。互いに捕食しあう虫たちの世界に、蜘蛛や鳥までが餌を求めて入り乱れる。殺戮と助け合いが共存する虫の世界が、奇妙なおかしみをかもしだす。

★どのようにして撮影したのだろうか。草の間から見上げる美しい太陽が、刻々と沈み行く。虫や風の効果音が虫の世界の臨場感を表出している。虫の目線・・・・草間の影にしゃがんで観察するナザーロフの姿が目に浮かぶ。その姿勢に感動。ときどきはいる虫の声をナザーロフ自身が担当しているそうだが、それはどこだろう。

★6本の足を交互に動かして移動する虫たちの動きは、3コマ撮りのテレビアニメでは表現できない。二コマ撮りか、いや一コマ撮りでないとああも多くの虫たちのリアルな動きは難しいだろう・・・だとすると彼らは何枚の動画を描いたのか・・・・。豊かな国の貧しいアニメーターは、浮かんでは消えるさもしい連想を打ち払いつつ、ナザーロフの虫たちに魅せられる。

幼い子どもたちから、「どうしたの?」「なにがおきたの?」「あの虫はなあに?」などの質問が噴出することまちがいなし。大人は事前に繰り返し見て、ちょっとした解説ができるようにしておこう。

★この作品を見るには                                             DVD:ロシアアニメーション傑作選1. 発売元 Geneon

エドアールド・ナザーロフ 1941年モスクワ生まれ、
1975年「ひとりぼっちのカバ」でデビュー。ノルシュテインと並ぶロシアアニメーション界の巨匠。作品に「お姫様と怪獣」1977年「マルティンコの奇跡」1987年など。

2007年8月30日木曜日

「おもちゃの反乱」 15分 チェコ 1946 監督 ヘルミナ・ティルロバ

★ナチによるチェコ占領時代を回想した作品。

 小さなおもちや工房に進入した横暴な男に、抵抗して戦うおもちやたちの大活躍。人形の世界に実写の人間が侵入するという手法で、ティルロヴァはナチス侵略時代の恐怖と抵抗した人々への共感を際ただせることに成功しています。人形たちの活躍に、思わず拍手。
ヘルミナの作家としての姿勢が、良く理解できる作品です。

★この作品を見るには
VHS:Vol 3 チェコ・アニメーション 発売元 レーザー・ディスク㈱

「結んだハンカチ」15分 チェコ 1958年 監督 ヘルミナ・ティルロバ
★やわらかなハンカチが命を吹き込まれて動き出す。そして、壊れた流しの蛇口が作り出す日常の騒動。女性監督ならではの生活感あふれた作品です。さわやかで、清潔感あふれる楽しさで見せます。「おもちゃに反乱」同様に、こちらにも実写の少年が登場しますが、ハンカチの人形となんの違和感なく見せるヘルミナの技術に感心します。

 そういえば、日本にもテルテル坊主があったけど、テルテル坊主が動き出すとどんな事件になるのかなぁ・・・などと思わせる楽しい人形アニメです。

★この作品を見るには
VHS:Vol 3 チェコ・アニメーション 発売元 レーザー・ディスク㈱ 

DVD:ヘルミナ・テルロバ「結んだハンカチ」その他の短編集 発売元 コロンビア

上の二つの作品は、ともに子どもから大人までが楽しめます。


ヘルミナ・ティルロヴァ Hermina Tyrlova(1900~)
 ヘルミナ・ティルロヴァ は、チェコアニメーション創始者カレル・ドダルの妻だそうですが、それよりもなによりも、子どもたちのために斬新なスタイルでアニメーションを作り出した巨匠として知られています。 彼女は、伝統的な人形アニメなどにこだわらず、おもちゃ、毛糸玉や銀紙、木片、ハンカチ、タオル、などといった子どもの周辺に身近にあるものを活用して優れた作品をいくつも作り出しています。
 戦時中の1941年に人形アニメーション『われら蟻族(アリのフェルダ)』の制作で、アニメ作家としてスタートしています。(有)


「こんにちは チェブラーシカ」20分 
1969年  ロシア(旧ソビエト時代の作品)  監督 ロマン・カチャーノフ


1969年から数年に渡って製作されたパペット(人形)アニメーション。シリーズ4本がある。人形のかわいらしく、かつ緻密で細やかであたたかい独特な動きがすばらしい。


★子どもたちへの愛情に溢れた作品。動物園の動物たちが勤め人(公務員?)という発想が面白い。人間を見る目のあたたかさの一方で、何事ルーズで停滞しがちな社会への批判。鋭い社会風刺ともなっています。
★チェブラーシカの名は冒頭のシーンで名づけられますが、「ぱったり倒れる」という意味を持つ「チェブラハッツァ」(чебурахаться)から来ているそうです。ロシアでは人気のキャラクターで、2004年のアテネオリンピックでロシア選手団の公式キャラクターに採用されました。
★ロシアの児童文学家、エドゥアルド・ウスペンスキーによるシリーズもの絵本に登場する猿ともクマとも思えぬ正体不明のキャラクター。相手役のワニのゲーナが、とても魅力的です。 (有)

幼い子どもといっしょに、家族で楽しめます。
★この作品を見るには

DVD:「チェブラーシカ」発売元 ㈱フロンティアワークス

ロマン・カチャーノフ監督  1921年、ロシア共和国(当時、ソビエト連邦)生まれ。
旧ソ連全盛期に活躍したアニメーション監督の巨匠。46年に連邦動画スタジオ(ソユーズ・ムリトフィルム=)に入る。彼の後輩に、現代の巨匠ユーリー・ノルシュテインがいます。

ソユーズムリトフィルム
 1935年にソ連邦立の最初のアニメ・スタジオとして設立。スタジオの代表作品に、1947年初の長編アニメ「イワンと仔馬」、1957年に「雪の女王」など。現在もロシア最大のアニメーション・スタジオとして知られています。